米田知子展「終わりの始まり」、原美術館
2008年 10月 17日
今回見て、現在と過去を貫く矢のようなものを感じた。現在から過去を見るというイメージ。
何が写っているかではなく、何を表現しようとしているのか――が重要でそれを実践している。
歴史的出来事は確かにあったということを強制するわけではないが、無視することのできない形で提示されている。
その意味で一番衝撃的なのは、地雷が埋められたサッカー場だ。リアルなイメージが浮かぶ。
「scene」のシリーズは代表作といわれるだけあって、コンセプトや狙いなどが想像しやすい。わかりやすいと言ってもいいかもしれない。
「雪解けのあとに」や「ワン・プラス・ワン」のシリーズはわかりにくかった。そのままストレートに受け取ればいいのだろうか。
国際諜報団のシリーズは面白い。想像する楽しみがある。彼らはこれらの場所で国家の重要機密について話しながらどんな気持ちで眺めていたのだろう。
プログラムには“「見えないものを見る」視線、…… 静謐な風景が奇妙にざわめきはじめる”とある。
また図録では作者がこんなことを書いている。
歴史というのは単一な解釈ができるものではなく、何層にも折り重なってできている。ビ
ジュアル・アーティストとして、忘れてはならぬことであろう。もう我々はのんきに目の前
に広がる光景を傍観するだけの人間ではいられないのである。ときにはその光景の裏に
ある理由を見ようとする力が必要なのだ。