リアルタイムで見た写真
2012年 06月 23日
6月8日(金)
東京国立近代美術館で「写真の現在4 そのときの光、そのさきの風」展を観る。
展示作家は村越としや、有元伸也、中村綾緒、本山周平、新井卓の五人。うち三人はそれなりに面識のある人だ。
村越さんは昨年の震災以降、出身地の福島県で撮影したものを集中的に発表している。今回の展示にはこれまでに見たことのあるものも含まれているが、ライティングのせいかコントラストが高めに思えた。大四つ切の作品を横一列に隙間なく展示する一方で、深い霧のかかった岩場の作品は大きなパノラマサイズだ。微かな緊張感と、作者のどうしようもないやるせなさのような気持ちを感じた。
有元さんの作品は2006年から昨年までに撮影、発表されたものだ。全部見たことのあるものだが、会場がいつものギャラリーよりも広く、天井も高いので案外小さく見えてしまう。
中村さんの作品はアクリル張りのものとスライド。「light」と題された、海辺の夕日のスライドは初めて見る。この作品にしても「night」「water」「pray」にしても、移ろいゆくものに関心があるのだと思う。彼女はスライドで大きく、連続的に見せることにこだわりがあるようだ。
本山さんは展示されている作品数が多く、写真集などの資料も多いので、集中して見ることが難しかった。たぶん、この一点あるいはこのシリーズという見せ方ではなく、撮影しては発表していくという行為そのものに重点があるのだろう。
新井さんはまったく初めての作家だ。ダゲレオタイプ(銀版写真)による作品。やはり撮影されたものよりも行為もしくは過程のほうにより重きを置いているのだろうと推測する。
2F「現代美術」の所蔵作品展は写真作品がいつもより多かった。現代アートの人に写真作品はいわゆる写真家の作品は大分印象が異なる。現代アートの場合、作品になる前に大量の思考が行われており、明確な考え方のもとに制作されている。さらに、写真が持っているといわれる偶然性は排除するか、思考の中に取り込まれているように思う。
展示作品は松江泰治「Cell」(スクエア、カラー)、若江漢字「見る事と視える事―枝」、河口龍男「113cm(鉄道)」、伊藤義彦:ハーフサイズのモノクロ・コンタクト。
3Fの写真特集は石元泰博「シカゴ、シカゴ」。P.G.I.でも同じシリーズの展示だったが、重複するのは5点くらいだった。
所蔵作品展は7月末から10月中旬まで改装のため休館となる。