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35㎜と大判

先日、35㎜と6×6では撮るものが違うと書いたが、やはり専門家におてはその違いは顕著なようだ。
だいぶ以前に写真家・横木安良夫さんが自身のブログに「デジタルカメラの粒状とノイズに関して長々と」という文章を載せている。そのなかで、横道にそれた箇所で35㎜と大判の違いについてわかりやすく述べている。
以下にその箇所を引用させていただく。

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僕にとって、35mmフィルムカメラは、ブローニーのイージー版ではない。
もちろん4x5とか8x10とか比べるものでもない。35mmカメラでしか撮れないものがたくさんあるからだ。
それは、スポーツ写真とかの機動性のことではない。
静物を撮っても、風景を撮っても、大型カメラと35mmカメラは写り方が違う。

多くの人は、大型カメラで撮ると、35mmで撮るより情報量が多くなり、写真のグラデーションも豊富になるので、すぐれた写真になると思っているようだ。
しかし実際は、大型カメラの写り方は、「即物的」に写ることだ。感覚的な言い方でもうしわけないが、僕はそう思って、大型カメラを使用する。もっといえば、「存在感」が必要なときには、大型カメラを使う。人物を撮っても、その表情がどうかというより、その画面のなかに存在していればいいのだ。表情なんてあまりないほうがいいぐらいだ。

それからくらべると、35mmに求めているのは、一般的に言う、機動性は当然として、
写り方のスピード感だ。これまた感覚的表現でもうしわけないが、「存在感」より「空気感」や雰囲気が写る。
たとえばポートレイトを撮るとき、8x10カメラで撮ると、表情なんてどうでもよいような気がする。さっき書いたことだが、そのカメラの前にたち、克明に複写されただけでもう、なんでもいいような気がする。ちょっと醜く写っても、気のないように写っても、それはそれだなと。だから目線がきた、記念写真のようにとっても、それこそ現実にカメラのまえで起こったこととして、魅力がある。ところが、35mmで撮ったときには、表情はとても大切になる。記念写真のように撮ると、記念写真でしかない。
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ものすごく説得力のある内容だ。
「存在感」と、「空気感」。
この違いを自覚していないとカメラの選択、ひいては撮るべきものを間違えてしまいそうだ。
by pprivateeye | 2007-05-08 22:02

写真について、極私的な、 あれやこれや


by pprivateeye