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「乱 4K」

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2017年4月14日(金)

YEBISU GARDEN CINEMAで黒澤明監督「乱 4K」(1985年)を観る。タイトルにあるように4Kデジタル修復されたものだ。
この映画の中心は当然
シェイクスピア「リア王」であり、
秀虎役の仲代達矢と狂阿弥役のピーターがそのストーリーの真ん中にいる。他に重要な役は楓の方の原田美枝子かな。
秀虎が息子たちに裏切られ城に火をかけられてから狂気と正気を行ったり来たりするところは仲代達矢だからこそだ。アップでも引きでもその存在感を見せている。
狂阿弥役のピーターは一人色黒でおかしなことばかり言って、あれは何だ余計だというレビューをいくつか目にするが、それこそがこの映画の世界の異常さを表わしている。異常ばかりでは正常が何かわからない。狂阿弥役がおどけながら、あるいは狂言風に言っていることはすべて真実なのだが、それを理解している者は周りにはいないように思えた。
クローズアップの頻度などでその場面や役の重要さが測れるが、長男太郎(寺尾聡)はほとんど印象に残らないし、その印象の薄さが役柄(演技)となっている。次郎(根津甚八)も最初は父親秀虎をどうするかと腹心たちと相談する場面などでクローズアップで捉えられるものの、楓の方(原田)が本性を表わしてからは背後からのショットが多くなった。
楓の方が次郎の正室の末の方(宮崎美子)をどうするのかと迫る場面ではカメラは絶対に次郎の表情を映そうとしない。ちなみに宮崎美子がクローズアップで捉えられることはまったくなかった。三郎(隆大介)は「リア王」では三女コーディリアに相当するが、この映画ではさほど重きが置かれていない。
一方で、楓の方は地味な登場の仕方をするが次第にその本性を露わにしてくる。そこには秀虎に攻め滅ぼされた一族の生き残りという背景がある。これは浅井長政の三姉妹のあり得たかもしれない生き方だと思う。三姉妹の母は織田信長の妹お市であり、姉妹は豊臣秀吉や徳川秀忠に嫁いでいる。浅井長政自身も信長に滅ぼされており、三姉妹の誰かが楓の方のように振る舞ったとしてもおかしくない。このことに触れた評はまだ目にしていない。
このような見方をしてくると、合戦のスケールがすごいとかの感想をよく見るが、それは付け足しのようにしか思えなくなってくる。実際には、多くの馬が走っている中で落馬するという演技はものすごく危険だ。それが何回も何人もがやっているわけだが、物語の展開から考えると合戦が必ずしも必要とは思えなかった。城攻めのシーンでは秀虎が狂うためにだけ必要としか考えられないでもない。このあたりもう少し切り詰めていけば親子の裏切りと愛情という関係が濃くなったのではないか。ただし、超大作というわけにはいかないかもしれないが。



  



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by pprivateeye | 2017-04-19 00:49 | 映画 | Comments(0)