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『言語ジャック』と「家族の肖像」

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2017年3月17日(金)

昨年、四元康祐という現代詩の詩人を知った。詩集『言語ジャック』に「名詞で読む世界の名詩」という作品がある。こんなふうに始まる。
秋 夜 彼方 小石 河原 陽 珪石 個体 粉末 音 蝶 影 河床 水
(中原中也「ひとつのメルヘン」)

蠅 時 部屋 静けさ 空 嵐 目 涙 息 攻撃 王 形見 遺言 部分 署名 羽音 光 窓
(エミリー・ディキンソン「蠅がうなるのが聞こえた――わたしが死ぬ時」亀井俊介訳)

心象 はがね あけび つる くも のばら やぶ 腐植 湿地 諂曲模様 正午 管楽 琥珀 かけら いかり にがさ 青さ 四月 気層 ひかり 底 唾 はぎしり おれ ひとり 修羅 風景 なみだ 雪 眼路 天 海 聖瑠璃 風 Zypressen 春 いちれつ 光素 脚並 天山 雪 綾 かげろう 波 偏光 まこと ことば 王髄 日輪 樹林 交響 碗 魯木 群落 枝 二重 喪神 森 梢 ひのき 草地 黄金 かたち けら 農夫 気圏 かなしみ 青ぞら つち 肺 みじん いちょう 火ばな
(宮沢賢治「春と修羅」)

あれ 何 永遠 太陽 海 見張り番 魂 夜 昼 世間 評判 方向 己れ 自由 サテン 燠 お前 義務 間 望み 徳 復活 祈り 忍耐 学問 責め苦 必定
(アルチュール・ランボー「永遠」宇佐見斉訳)

・・・・・・
この詩はこんな調子で28人の詩の名詞だけが引用されている。文節はなくても使われている名詞を見るだけでその詩の世界が浮かび上がってくるようだ。谷川俊太郎とは異なった形で言葉に関わっていることが面白くて気持ちがいい。

この詩集を思潮社のサイトで注文したのだがついでだし直接買いに行こうと思った。が、所在地の番地を間違えてしまい、東西線神楽坂駅で降りてしまった。一度はあるビルに入ったのだがそれらしき会社の気配がない。改めて検索したら番地は1-17ではなく1-7だった。そしてそこは凸版印刷の側だった。その近くでまたウロウロしていたら声をかけてくる男性がいて、それが思潮社の人だった。約束の時間に来ないのでわざわざ路上まで出てこられたようだ。さらに支払いのときには消費税までサービスしてもらった。たぶんおつりが面倒だったのだと思う。ちらっと見えた室内は本の山で外にまであふれそうで、なんかいい感じのする空間だった。

せっかくなので向かいの凸版印刷の印刷博物館を見学する。1Fの入場無料の展示だけ見る。凸版文久体という新しい書体を作る過程が展示されていた。ブックデザイナーの祖父江慎の校正とかも見られて面白かった。で、完成した書体が上の写真。凸版文久見出しゴシックEBというもの。

このあと神保町の岩波ホールへ。ヴィスコンティ「家族の肖像」を観る。始まった回の次の時間だったので整理券番号は№1だった。実はこの映画館は初めてだ。ちょっと料金が高い、というか割引率が小さい。ヴィスコンティは「山猫」を観て以来のファンだ。どちらもバート・ランカスターが主演を務めているが、印象は対照的だった。「山猫」での公爵は没落していく貴族階級の中でも背筋を伸ばしているが、「家族の肖像」での教授は世間からドロップアウトして自分だけの狭い世界に生きている。その教授に父と息子、そして同性愛的な関係をうかがわせた青年がヘルムート・バーガーで、最初はガサツな人物に思えたのが次第にその知性と危ない政治思想を見せてきて、教授との関係が強くなっていく。いいなあと思っていたら、この人は「ルートヴィヒ」を演じた人だった。しかもヴィスコンティはトーマス・マン「魔の山」の映画化も企画しており、その主役ハンス・カストルプにヘルムート・バーガーを予定したという記事を読んで、観たい!と思ったのだった。





  


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by pprivateeye | 2017-03-21 01:53 | 映画 | Comments(0)
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写真について、極私的な、 あれやこれや


by pprivateeye
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