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グルスキー作品についての講演

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7月14日(日)

国立新美術館での「アンドレアス・グルスキー展」の関連イベントで、「グルスキー作品について考える ――巨視的に、微視的に」という講演に出席。講師は東京国立近代美術館主任研究員の増田玲さん。
以下、そのときのメモから。1.2.3.は増田さんが提示してそれに合わせて話したもの。

1.展覧会場で観る
「グリーリー」と「99¢」が一つの部屋で隣同士の壁に展示されている。その内容、並びのそれぞれの意味を考える。屋外と室内、生産と消費、斜めと正面。展示空間はわれわれの身体的行動を意識。見せ方では展示の方法論、東京で見せるということを考慮。いろいろなレベルにおける「引いて見る、寄って見る」。

2.作品の位置――写真史的、美術的
空間の中でイメージを楽しむ(美的体験)。一方で、知的な体験。批判的な視点で世界を見る。こういった読み解く楽しみがある。
読み解く手掛かり(背景、位置づけ)として風景にこれまでの写真家はどのようにアプローチしているか。
・風景そのものの美しさ。アンセル・アダムス
・写真家の視点で風景にアプローチ。スティーグリッツ「Eqivalents」。対象(雲)に反応する自分の内面。精神性を写真に閉じ込めようとした。またそれによってわれわれの内面が動く。
・風景自体を読み解くべき対象と見る。「New Topographics」(1975年)。ロバート・アダムス、ステファン・ショア、ベッヒャー夫妻。アンセル・アダムス的風景はフィクションだ。
グルスキーは1980年頃ベッヒャーに学ぶ。
ベッヒャーのタイポロジー(類型学)。ディテールの積み重ねが膨大なアーカイブへ。部分と全体、二重の構造。機能的にイメージを積み重ねる。全体=背景にある時代の精神。グルスキーはエッセンスとして引き継いでいる。
読み解きの対象としてのグルスキー作品は手掛かり(レファレンス)が多い。Casper David Friedrichの絵画「The Sea of Ice」。崇高、壮大なものの精神性。「バンコク」はBarnet Newmanの「Onement Ⅰ」、「F1ピットストップ」は西洋絵画の連想。意図的に過去の美術の歴史を引用しているのではないか。
美術作品を撮った写真、グーグルの衛星写真。作者はどこか、誰か。カメラの後ろに作者がいることは必要か。ポストモダンの考え方。風景にアプローチする自分自身も読み解きの対象としている。絶対的な作者の位置の否定。作者の位置をあいまいにする。

3.その今日的な想像力、感受性
何を表現しているか。現代の社会(風景)。グローバル経済の風景。証券市場のシリーズ。高度な視覚を消費していく。「マドンナ」、ハイパーメディア的体験。マクルーハンのメディアはメッセージである、メディアは世界のあり方、人間の認識を変質させていく。
本城直季「Small Planet」(2006年)。木村伊兵衛賞受賞の際のコメントで篠山紀信は「病的」、藤原新也は「箱庭療法、幼児的対象」と、自分たちは健全で彼は不健全だという意味合いのことを述べていた。しかしピントが一部分にだけ合っているというのは、知りたい対象に一気にアプローチしており、われわれが日常的に物事を知る行為と同じである。われわれの頭の中の操作が外部化されている。今日的、日常的なリアリティがある。ただ、読み解きの仕掛けが多いということが作品の価値を高めているということではない。


グルスキーが過去の美術の歴史を引用しているのではないかという指摘は分かりやすかった。「F1ピットストップ」の例としてダビッドの描いたナポレオンとジョセフィーヌの戴冠式の絵を挙げられていたが、その話を聞いて自分としてはレンブラントの光りを連想した。
部分と全体という視点からの話だったが、「差異と反復」「マス」という面からの指摘はほとんどなかったのは残念だ。単純にまず目が付くのはデザインとして反復ではないだろうか。講演の際にもらったチラシはこのグルスキー展のものと、これから開催されるアメリカン・ポップアート展のものだった。そこにはウォホールのキャンベル・スープ缶が並んでいる。グルスキーのカミオカンデと並べて見比べて、その違いは何だろうかと思ってしまう。
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by pprivateeye | 2013-07-15 02:44 | Comments(0)
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写真について、極私的な、 あれやこれや


by pprivateeye
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